
ペーパーレス化の推進には、適切なITインフラの整備や従業員の教育、法制度の理解と遵守が不可欠です。また、デジタル化によるセキュリティリスクへの対策も重要な要素となります。
これらを総合的に考慮し、段階的かつ計画的にペーパーレス化を進めることが成功の鍵となります。
1.ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは、紙を使用した業務プロセスや文書管理をデジタル化することを指します。
具体的には、紙の書類や帳票を電子データに置き換え、電子メールやクラウドストレージ、デジタル署名などの技術を活用して情報のやり取りや保存を行うことです。
これにより、紙の使用量を削減し、業務効率の向上やコスト削減、環境保護などのメリットが期待されます。
ペーパーレス化の定義
ペーパーレス化の定義は、単に紙を使わないことだけでなく、デジタル技術を駆使して業務プロセス全体を最適化することを含みます。
例えば、紙の書類をスキャンして電子化するだけでなく、電子署名を導入して契約書のやり取りをオンラインで完結させる、クラウドベースのプロジェクト管理ツールを使ってチーム間のコミュニケーションを効率化するなど、多岐にわたる取り組みが含まれます。
2.ペーパーレス化のメリット

ペーパーレス化には多くのメリットがあり、以下にその主要なポイントを詳述します。
業務効率化
ペーパーレス化により、書類の検索や共有が迅速かつ容易になります。
デジタルデータはキーワード検索が可能で、必要な情報を瞬時に見つけることができます。
また、クラウドストレージを利用することで、複数の担当者が同時にアクセスし、リアルタイムで編集や確認が可能です。これにより、業務のスピードと正確性が大幅に向上します。
コスト削減
紙の使用を減らすことで、印刷費用や紙代、保管スペースのコストが削減されます。
さらに、郵送やファックスの必要がなくなるため、通信費も削減できます。
これにより、企業全体の運営コストが大幅に低減され、経済的なメリットが得られます。
セキュリティ強化
デジタルデータは、アクセス権限の設定や暗号化により高いセキュリティを確保できます。
紙の書類は紛失や盗難のリスクがありますが、デジタルデータはバックアップやリカバリが容易で、災害時のデータ保護も万全です。これにより、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
環境への配慮
ペーパーレス化は、紙の消費を減らし、森林資源の保護に貢献します。
また、印刷に伴うインクやトナーの使用も削減されるため、環境負荷が軽減されます。
企業が環境に配慮した取り組みを行うことで、社会的な評価も向上します。
テレワークの推進
ペーパーレス化は、リモートワークやテレワークの推進にも寄与します。
デジタルデータはインターネットを通じてどこからでもアクセス可能であり、物理的な書類のやり取りが不要になります。
これにより、場所にとらわれない柔軟な働き方が実現し、従業員のワークライフバランスの向上にもつながります。
3.ペーパーレス化の進め方

ペーパーレス化を進めるためには、以下のステップを踏むことが重要です。
1. 目的を明確にする
ペーパーレス化を進める前に、まずその目的を明確にすることが必要です。
業務効率化、コスト削減、セキュリティ強化、環境への配慮など、具体的な目標を設定することで、プロジェクトの方向性が定まります。
2. データ化する書類を見極める
全ての書類をデジタル化するのではなく、どの書類をデータ化するかを見極めることが重要です。
業務に必要な書類、頻繁に参照される書類、法的に保存が必要な書類などを優先的にデータ化します。
3. 必要なツールやサービスを検討する
ペーパーレス化を進めるためには、適切なツールやサービスを選定することが重要です。
OCR(光学文字認識)、ソフトウェア、文書管理システム、クラウドストレージなど、業務に適したツールを導入します。
4. 運用ルールを決める
デジタル化した書類の管理方法やアクセス権限、バックアップの方法など、運用ルールを明確に定めます。これにより、データの一貫性とセキュリティを確保します。
5. 社内に周知して実行する
ペーパーレス化の方針や運用ルールを社内に周知し、全社員が理解し協力するようにします。
必要に応じて、研修や説明会を実施し、ITリテラシーの向上を図ります。
6. 分析や改善を行う
ペーパーレス化を進めた後も、定期的に運用状況を分析し、問題点や改善点を洗い出します。
これにより、より効率的で効果的なペーパーレス化を実現します。
これらのステップを踏むことで、ペーパーレス化をスムーズに進めることができます。
4.ペーパーレス化に必要なツール・サービス

ペーパーレス化を実現するためには、適切なツールやサービスの選定が不可欠です。
1.ドキュメント管理システム(DMS)
ドキュメント管理システムは、電子文書の作成、保存、検索、共有を効率的に行うためのツールです。これにより、紙の書類をデジタル化し、必要な情報を迅速にアクセスできるようになります。
2.電子署名サービス
電子署名サービスは、紙の契約書や承認書を電子化し、法的に有効な署名をオンラインで行うためのツールです。これにより、契約プロセスが迅速化され、紙の使用が大幅に削減されます。
3.クラウドストレージサービス
クラウドストレージサービスは、デジタル化された文書を安全に保存し、どこからでもアクセス可能にするためのツールです。これにより、物理的な書類の保管スペースが不要になり、データのバックアップも容易になります。
4.スキャナとOCRソフトウェア
スキャナは紙の書類をデジタル化するためのハードウェアであり、OCR(光学文字認識)ソフトウェアはスキャンした文書をテキストデータに変換するためのツールです。これにより、紙の書類を簡単にデジタル化し、検索可能な形式に変換できます。Adobe Acrobatが一般的です。
5.ワークフロー管理システム
ワークフロー管理システムは、業務プロセスを自動化し、効率化するためのツールです。
これにより、紙ベースの手続きがデジタル化され、業務の透明性と効率が向上します。
代表的なシステムには、Kintoneがあります。
業務の効率化を実現するアプリがつくれるクラウドサービス「kintone(キントーン)」
6.コラボレーションツール
コラボレーションツールは、チームメンバーがリアルタイムで情報を共有し、共同作業を行うためのツールです。これにより、紙のメモや会議資料が不要になり、コミュニケーションが円滑になります。
これらのツールやサービスを適切に組み合わせることで、ペーパーレス化を効果的に進めることができます。導入の際には、自社の業務プロセスやニーズに合ったツールを選定し、従業員への教育やサポートも重要です。
5.ペーパーレス化を進める際の注意点
ペーパーレス化を進める際には、以下の注意点を考慮することが重要です。
1.セキュリティ対策の徹底
デジタルデータは紙媒体に比べて容易にコピーや改ざんが可能です。
そのため、データの暗号化、アクセス権限の設定、定期的なバックアップなどのセキュリティ対策を徹底する必要があります。また、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクを最小限に抑えるための対策も欠かせません。
2.法的要件の確認
ペーパーレス化に伴い、電子データの保存や管理に関する法的要件を遵守することが求められます。
特に、税務書類や契約書などの重要書類は、法的に定められた保存期間や形式を守る必要があります。これに違反すると、法的なトラブルに発展する可能性があります。
3.従業員の教育とトレーニング
新しいシステムやツールを導入する際には、従業員がそれを適切に使用できるように教育とトレーニングを行うことが重要です。特に、デジタルツールの操作方法やセキュリティ意識の向上を図るための研修を実施することで、スムーズな移行が可能となります。
4.システムの選定と導入
ペーパーレス化を進めるためには、適切なシステムやツールを選定し、導入することが必要です。
例えば、OCR(光学文字認識)技術を用いたデジタル化、クラウドストレージの利用、文書管理システムの導入などが考えられます。これらのシステムが自社の業務フローに適合するかどうかを事前に検討し、最適なものを選ぶことが重要です。
5.コストとROIの評価
ペーパーレス化には初期投資が必要となります。システム導入や従業員のトレーニング、既存の紙資料のデジタル化などにかかるコストを正確に見積もり、投資対効果(ROI)を評価することが重要です。長期的な視点でコスト削減や業務効率化の効果を見込むことが求められます。
6.業務プロセスの見直し
ペーパーレス化を進める際には、既存の業務プロセスを見直し、デジタル化に適した形に再設計することが必要です。これにより、業務の効率化やミスの削減が期待できます。
特に、紙ベースの業務フローをそのままデジタル化するのではなく、最適化されたプロセスを構築することが重要です。
これらの注意点を踏まえ、計画的かつ段階的にペーパーレス化を進めることで、効果的なデジタル化を実現することができます。
6.まとめ
今回はペーパーレス化の基礎知識やメリット、進め方についてご紹介しました。
ペーパーレス化は、業務効率化やコスト削減などといった多くのメリットが期待できる上に、SDGs
「8.働きがいも経済成長も」
「12.つくる責任つかう責任」
「13.気候変動に具体的な対策を」
「15.陸の豊かさも守ろう」
の4つのゴールに貢献します。

ペーパーレス化の推進を検討している企業は、まずはワークフローシステムで社内の業務手続きを電子化するところから始めてみるのをおすすめします。
日興商会ではペーパーレス化を検討している企業様のご相談を承っております。ご気軽にご相談ください。